くすの木句会例会

 

⦿くすの木句会例会

 くすの木会例会は、毎月第一土曜日の午後1時から、母校同窓会室(図書館2階)で行ってます。

投句は当季雑詠5句です。選句、鑑賞を行っています。又、席題3句を行っています。

 これらの俳句については、本阿弥秀雄先生(高18回)(本阿弥書店顧問)の指導を仰いでます。

   くすの木句会会長:柴崎甲武信氏(髙2回・「春燈」同人)

   事務局:同窓会事務局 電話&FAX:049(225)9071

◇第219回句会録(平成30年3月10日)主な作品

春の雲大河を越えて消えにけり   柴崎甲武信

人待ちの寄りかかりたるリラび花  斉藤弘行

目隠しは眠り薬よ納め雛      小林幸二

糸遊やたどたどしきは手話の指   勝浦敏幸

風船や子は父となり爺となり    安斎和子

満天に小屋の灯消す寒北斗     長島たけし

諍ひは三和土に残る春の泥     大原絹子

強東風やいやいや開く自動ドア   岡部つねを

結いあげしうなじの白や雪の宿   関口高栄

屋敷樹の幹だけ残り春の月     市川英一

◇第218回句会録(平成30年2月3日)主な作品

別刷りのクロスワードや春隣    市川英一

父のごと声はとどかず節分会    栗原よしろう

初雪に重ねる蔵の美しさ      長島たけし

ベートーベン聴きし竹針供養せり  柴崎甲武信

手袋を脱いで痛いほどにぎる    斉藤弘行

湯冷めして鏡の中にゐる他人    小林幸二

ふらここに坐して生くるを思ひけり 勝浦敏幸

枝移る鴉頻りに雪落とす      大原絹子

何につけ上には上がおらが春    岡部つねを

◇第217回句会録(平成30年1月6日)主な作品

忘年は葉擦れのやうな汽笛して   市川英一

運慶の頬もゆるんで冬日和     栗原よしろう

多忙といふ棒につつかれ去年今年  岡部つねを

ピリンターの歯切れ良き音に賀状刷る 大原絹子

衛士ひとり淑気の杜の御用邸    安斎和子

初春の影絵となりぬ鴉かな     勝浦敏幸

黒潮のひかりをまとひ初日の出   小林幸二

七種や本家分家の縁淡く      柴崎甲武信

◇第216回句会録(平成29年12月2日)主な作品

大掃除光り延びたり長廊下     長島たけし

冬うらら芋羊羹を食異人      岡部つねを

しぐるるや顔かくさずに相合傘   斉藤弘行

日当たりて書棚拭き込む冬座敷   大原絹子

冬ざれの鼓膜くすぐるマンドリン  安斎和子

枯菊の火弱まればどんと足す    勝浦敏幸

うなじより湯冷める心地化粧台   小林幸二

煤ぼけし船底天井鮟鱇鍋      柴崎甲武信

◇第215回句会録(平成29年11月4日)主な作品

ひと降り来綿虫のつと消えてより  柴崎甲武信

犬が嗅ぐ松茸山の道なき道     小林幸二

足るを知る背筋を伸ばしゆず湯かな 勝浦敏幸

信号を鳩と渡りぬ秋日和      柴崎富子

割り勘の小銭並べるおでん鍋    安斎和子

掌に刻む絹ごしなめこ汁      大原絹子

恋人の黄色いりぼん秋の蝶     斉藤弘行

広辞苑消えし言葉や文化の日    岡部つねを

せせらぎの岩間にすがる秋海棠   長島たけし

赤赤と空を掴まん鷹の爪      関口高栄

◇第214回句会録(平成29年10月7日)主な作品

晩秋や壁に浸み込む日の名残り   岡部つねを

温め酒五臓六腑に灯がともる    安斎和子

カステラを切って雨月をなぐさめる 斉藤弘行

巡幸に威厳を正せり曼珠沙華    大原絹子

秋風とともに巴里から馬二頭    勝浦敏幸

蟷螂の羽根を広げる能舞台     小林幸二

火恋し固きチーズを切りあぐね   柴崎甲武信

◇第213回句会録(平成29年8月7日)主な作品

牛蛙鳴きし名もなき沼の淵     関口高栄

本題になかなか触れずビール干す  岡部つねを

朝もやに妖し灯群れる凌      長島たけし

新涼の汲みては落す水車かな    安斎和子

恋人はまだいないけど苺ジャム   斉藤弘行

大方は草食男子草角力       大原絹子

真似の真似すれば大きな踊りの輪  勝浦敏幸

手花火の指の先より星生まる    小林幸二

物干台は特等席や大文字      柴崎甲武信

◇第212回句会録(平成29年7月1日)主な作品

黒髪の真直ぐがセ・シ・ボン巴里祭 柴崎甲武信

花嫁の泪は真珠六月尽       小林幸二

発つヨット窓に少女の細き肩    勝浦敏幸

ひと群の子目高仄と紅差せり    大原絹子

レコードの一千枚の巴里祭     斉藤弘行

切り裂きても切り裂きても蜘蛛の糸 安斎和子

伊佐沼の香り高めん蓮かな     長島たけし

蜘蛛の囲や忖度といふ見えぬ糸   岡部つねを

◇第211回句会録(平成29年6月3日)主な作品

御代変はる日の近からむ梅雨の蝶  柴崎甲武信

米粒の人に尾を振る鯉のぼり    小林幸二

煩悩より解脱の一歩羽抜鳥     勝浦敏幸

老鶯の音色極みる峠茶屋      大原絹子

新緑の葉裏をかへし風騒ぐ     関口高栄

初夏や少年棋士の千日手      安斎和子

田植機や田毎の隅の余り苗     長島たけし

忖度の人生航路ややませ吹く    岡部つねを

◇第210回句会録(平成29年5月6日)主な作品

海棠や唐招提寺雨の中       小林幸二

新茶淹れ話の腰を折りにけり    勝浦敏幸

怪鳥の化石見つかる愛鳥日     岡部つねを

停車して夕虹の空暫しかな     大原絹子

惜春や空のかなたに鳥一羽     関口高栄

羅や真砂女は恋にたじろがず    柴崎甲武信

休耕の天に放てり鯉のぼり     安斎和子

ホトトギス光集めしくぬぎ山    長島 威

◇第209回句会録(平成29年4月1日)

音もなく蝌蚪の一揆の始まりぬ   安斎和子

ご機嫌な嬰児の喃語桃の花     大原絹子

さよならは接続詞とや鳥帰る    岡部つねを

花篝今宵の顔となる女       勝浦敏幸

鳥雲に東京駅は通過駅       柴崎甲武信

後手に歩み確かむ春の土      関口高栄

尾の先も同じ彩どり桜鯛      小林幸二

◇第208回句会録(平成29年3月4日)

一村を呑んでダム湖の夕がすみ   佐々木新

宝くじ終生買はず良寛忌      安斎和子

春塵や母の遺髪のお針箱      大原絹子

韋駄天を追ひつ追はれつ春疾風   岡部つねを

即妙の一句とならず山笑ふ     勝浦敏幸

たましひの香りは無色梅真白    小林幸二

トンネルの果てに湖ふがすみ    佐々木新

奥鬼怒を渡る汽笛や雪解水     関口高栄

◇第207回句会録(平成29年2月4日)主な作品

冴返る戦語りに壱銭玉       安斎和子

開け放つ選挙会場春火鉢      大原絹子

春潮のまず突き当たる佃島     岡部つねを

梅真白恩賜文庫の古書漢書     勝浦敏幸

千貫の甍の空や雁帰る       小林幸二

二月の曙一条遠筑波        佐々木新

落つるべく咲く椿なり百花ほど   柴崎甲武信

九尺の脚立と地下足袋剪定音    関口高栄

◇第206回句会録(平成29年1月7日)主な作品

竹馬の一歩が青し蔵の街      小林幸二

臼端の湯気の揺蕩ふ千切れ餅    勝浦敏幸

満席のアニメ映画や三が日     大原絹子

七種や家訓家風もなき家系     岡部つねを

年新た今朝もいつもの富士を見に  関口高栄

足元の柴に始まる大枯野      柴崎甲武信

初芝居二の腕太き女形       安斎和子

片隅に遠富士据えし大枯野     柴崎富子

息白く丹頂の群れ啼き交わす    佐々木新

◇第205回句会録(平成28年12月3日)主な作品

籠りゐて命を繋ぐ蕪汁       安斎和子

LEDに換えし厨の寒さかな    大原絹子

足りていて何か足りない小六月   岡部つねを

抱くやに降りし白鳥陽を沈め    勝浦敏幸

一茶忌やなかなか減らぬ子のいじめ 小林幸二

風花やたったふたりの露天風呂   斉藤弘行

神杉の影くろぐろ里神楽      佐々木新

二の酉や素うどんに舞ふ削りぶし  柴崎甲武信

初霜や轍の著き木橋の上      柴崎富子

初雪やジャズの音色とパイプの香  関口高栄

◇第204回句会録(平成28年11月5日)

閉店の巨大な箱なる夜寒      安斎和子

身の回り片附かぬ儘冬に入る    大原絹子

古書市の秋陽に晒す昭和かな    岡部つねを

草じらみ寄り道せぬと云ひし嘘   勝浦敏幸

流星や空に鉄路の軋む音      小林幸二

君のうた秋の声より美しく     斉藤弘行

荒漠のサリベツ原野青鷹      佐々木新

菊人形濡れ場たっぷり水を差す   柴崎甲武信

同期生交歓の方木の実降る     柴崎富子

甲斐の山四方の高みやぶどう狩る  関口高栄

◇第203回句会録(平成28年10月1日)

菊の香や小江戸小路に寺いくつ   安斎和子

秋霖やひそと知友の尊厳死     大原絹子

濃淡の朝霧湖を染め分けて     岡部つねを

幕臣の拓らしき茶の地秋の川    勝浦敏幸

台詞なき主役演ずる案山子翁    小林幸二

恋は下手なり大根は上手く蒔く   斉藤弘行

二階まで零余子飯の香山の宿    佐々木新

蔦の花曳けば火の山立ち上がり   柴崎甲武信

秋風の自在に遊ぶお下げ髪     柴崎富子

紫紺とは日照り喜ぶ那茄子の照り  関口高栄

◇第202回句会録(平成28年8月6日)

夏深む風の幽かに寂聴庵      安斎和子

諳んずる教育勅語終戦日      大原絹子

芋焼酎今日の稼ぎは今日使う    岡部つねを

夏帽のゴム紐長く伸ばす癖     勝浦敏幸

モンローのこゑ甦る水中花     小林幸二

銀漢を仰いで寧し山の宿      佐々木新

雷鳥の見守る遭難救助隊      柴崎甲武信

峰に湧く雲の百相秋立てり     柴崎富子

ジャズの音や残暑にあえぐ蔵の街  関口高栄

◇第201回句会録(平成28年7月2日)

白靴や東西南北駅四つ       安斎和子

全身で割る青梅の香気かな     大原絹子

夏つばめ六区はキネマ消えし街   岡部つねを

円相と想ふほかなし夏満月     勝浦敏幸

蛍火や真砂女の店の燐寸擦る    小林幸二

籐寝椅子胸に女優の週刊誌     斉藤弘行

明け易の夜具の重さや岐阜の宿   佐々木新

万感のオバマ万緑の爆心地     柴崎甲武信

ふるさとの軒の高さや釣忍     柴崎富子

お蚕の桑食う毎に雨の音      関口高栄

◇第200回句会録(平成28年6月4日)主な作品

馴れ初めを聴くかき氷とかしつつ  安斎和子

ひふみ孵る目高の数よめず     大原絹子

津軽富士笠雲かかり桜桃忌     岡部つねを

薄暑光バス停まるらし三丁目    勝浦敏幸

ねじ花や八百屋お七が鐘を撞く   小林幸二

帰るべしとは君決める夕立かな   斉藤弘行

松蝉やピタリと動く馬の耳     佐々木新

洗ひ古びし藍染めの夏帽子     柴崎甲武信

立ち並ぶ側室の墓碑夜鷹鳴く    柴崎富子

笹揺れて鶯鳴くや竹の寺      関口高栄

 

◇第199回句会録(平成28年5月7日)主な作品

御柱木遣りつんざく春の空     関口高栄

蚊柱や川に向ひて建つ山門     勝浦敏幸

桜しべ零るる露地の暗さかな    佐々木 新

家ごとに橋もつ家並麦の秋     大原絹子

真良を待たされて居り熱帯魚    柴崎富子

緑陰に入りて弾みぬ英会話     柴崎甲武信

立身も出世もあらず菖蒲風呂    岡部つねを

草萌ゆる大地より生る火炎土器   小林幸二

夏霧や創痕薄き武甲山       安斎和子

◇第198回句会録(平成28年4月2日)主な作品

レコードに裏表ある日永かな    斉藤弘行

沈丁花香りし宅に長居せり     関口高栄

芽柳や銀座の夜風思ひのまま    柴崎富子

しゃきしゃきと老いを生きたし土筆和 勝浦敏幸

野蒜摘む背を吹く風の軽やかに   大原絹子

久に逢ふ地縁血縁彼岸寺      安斎和子

春うららふな屋放るる遊覧船    佐々木 新

みちのくのゆるがぬ雲居雁帰る   柴崎甲武信

恋猫の傷は勲章朝帰り       岡部つねを

漱石の自慢の髭や猫の恋      小林幸二

◇第197回句会録(平成28年3月5日)主な作品

梅が香の病舎に肺腑洗ひけり    佐々木 新

こぼれ咲く河津桜や二月尽     関口高栄

飴を切る菓子屋横丁風車      大原絹子

カーテンを引き戻したり春満月   柴崎富子

川越夜船発ちたる河岸の朧かな   柴崎甲武信

びんせんにさよならだけの鳥雲に  斉藤弘行

紅梅白梅神にもっとも近き村    小林幸二

絡めての門より桜吹雪かな     勝浦敏幸

春おぼろ轆轤歪みて立ち上がる   安斎和子

啓蟄や地下道出口まちがへし    岡部つねを

◇第196回句会録(平成28年2月6日)主な作品

大津絵の眼飛び出す寒もどり    安斎和子

雪折れを寄せし日向の小半時    大原絹子

竜天に登り噴火の桜島       岡部つねを

相関図に太い矢印猫の恋      勝浦敏幸

大寒や水が刃を研ぐ厨       小林幸二

おそろいの春セーターの仲直り   斉藤弘行

如月や岬の隠す遠岬        柴崎甲武信

縮まりし釦の穴や寒晒       柴﨑富子

雛飾り男ばかりの孫五人      関口高栄

人の輪も解かんばかりのどんどの灯 森住霞人

◇第194回句会録(平成27年12月5日)主な作品

冬日燦々千の人形供養かな     安斎和子

無言館黙して巡る冬日かな     大原和子

咳込みて第4楽章中座する     岡部つねを

約束は違へるために冬薔薇     勝浦敏幸

将門の馬嘶けり冬桜        小林幸二

抱き寄せる寒さ凌ぎのありにけり  斉藤弘行

冬霞ビル群ふはり天空に      佐々木新

大地割りに仁王立ちたる大銀杏   関口高栄

神主がホールインワン神の留守   柴崎甲武信

千人針差しし手の皺毛糸編む    柴崎富子

◇第193回句会録(平成27年11月7日)主な作品

-松本旭氏逝去深悼ー

鳥渡る地にあまたなる史を遺し   安斎和子

有り合わせを刻むすいとん一茶の忌 大原絹子

神無月地図に卍の多き坂      岡部つねを

もみづるや行き交ふ人の旅鞄    勝浦敏幸

ノーブル賞祝ふ母校や雁の列    小林幸二

地図になきわが家への道枯芒    斉藤弘行

熊除けの鈴に行きあふけもの道   佐々木新

関東平野真ん中より訃秋深む    柴﨑甲武信

秋風の術に委せる乱れ髪      柴﨑富子

虫の音を引き摺り閉づる雨戸かな  森住霞人

◇第192回句会録(平成27年10月3日)主な作品

青春はいっときの炎や曼珠沙華   安斎和子

幕間に新そば啜る芝居茶屋     大原絹子

鯊日和牙の筏に胡坐かく      岡部つねを

これまでの毀誉褒貶や菊を焚く   勝浦敏幸

からす瓜薩摩隼人に血を引きぬ   小林幸二

コスモスの風のなき日を待ちにけり 斉藤弘行

新走昔語りに夜の更くる      佐々木新

昼の星虚子は見たるや天高し    柴崎甲武信

大寺の金色の鴟尾月天心      柴崎富子

落とし水各所に聞こゆ棚田かな   関口高栄

介護士の異国なまりや曼珠沙華

◇第191回句会録(平成27年8月2日)主な作品

銀漢や信濃に展くコンサート    安斎和子

底深き座敷を選りて暑気払い    大原絹子

炎天の影なきものに怯えけり    岡部つねを

一口のゼリーに海の碧を見る    勝浦敏幸

露伴忌や五重塔に雷走る      小林幸二

老鶯の声を頭上に峡谷行く     佐々木新

誰彼を待つにはあらず水を打つ   柴崎甲武信

空耳に遠海鳴りや夜の秋      柴崎富子

鬼百合の咲きて法事の時期告げる  関口高栄

捉へられ雲動かざる猛暑かな    森住霞人

◇第190回句会録(平成27年7月4日)主な作品

風鈴や路地に連なる湯屋置屋    安斎和子

たまゆらの蛍の庭にもてなさる   大原絹子

ねじ花は微分積分解けぬまま    岡部つねを

麦こなしうなじにかけし白タオル  勝浦敏幸

信長に遅れて投下光秀忌      小林幸二

夏帽子山の上まで運びけり     斉藤弘行

走り露川底さらす不老川      佐々木新

文字通り仏法僧と妙なる音     柴崎甲武信

遠地震やかすかに揺るる水中花   柴崎富子

鈴なりの山桃赤し梅雨晴間     関口高栄

死に急ぐこともなき身や蟻地獄   森住霞人

◇第189回句会録(平成27年6月6日)主な作品

蹲踞や夏帯きりり老女将      安斎和子

晩学の伊勢物語古茶替へて     大原絹子

更衣封切り酒口あたり       岡部つねを

暮なずむ米屋ののれん燕の子    勝浦敏幸

宮人の声ゆく貴船祭りかな     小林幸二

夏あかり画廊に欲しきヌード像   斉藤弘行

武家町の石垣攀じる青蜥蜴     佐々木新

手花火の残り数へて分かちけり   柴崎甲武信

高層に棲み六月の雲の中      柴崎富子

早苗田に鴨のつがいの遊びきし   関口高栄

孫からも遠き存在草を抜く     森住霞人

◇第188回句会録(平成27年5月2日)主な作品

夏の灯や船弁慶の仁王立ち     安斎和子

麦秋や敵機仰ぎし学童期      大原絹子

文無しも腹ふくらまし鯉幟     岡部つねを

まっすぐに的見つむるや樟若葉   勝浦敏幸

亀鳴くや熊野は闇と水の国     小林幸二

知恵伊豆の廟所明るき若葉風    佐々木新

万緑や山路をつなぐ丁目石     柴崎甲武信

疎開地が終の栖や花おぼろ     柴崎富子

竹の子や土塊をはねて雨後の朝   関口高栄

◇第187回句会録(平成27年4月4日)主な作品

亀鳴くや納得いかぬピカソの絵   安斎和子

春暁や軽き鳥語に目を覚まし    大原絹子

目刺焼く回想の昭和天皇記     岡部つねを

飛花落花漆黒の馬歩き過ぐ     勝浦敏幸

西行の声の魅入られ花の塚     小林幸二

ジッパーを引き下げてより春の宵  斉藤弘行

糸桜ゆいれて朝の陽わかちけり   佐々木新

二階より吾が名呼ばれぬ花月夜   柴崎甲武信

東京生まれ東京育ち葱坊主     柴崎富子

春ざれや花々揺れし安房の旅    関口高栄

◇第186回句会録(平成27年3月7日)主な作品

梅の寺普遍の視野の大師像     安斎和子

椰子並ぶ安房の海道山笑ふ     大原絹子

漆黒の三代の蔵風光る       岡部つねを

酒のほか何も求めず春の宵     勝浦敏幸

遠浅の海は揺り籠雛の宿      小林幸二

幸せの絵本の終わり桜草      斉藤弘行

目刺焼く昭和は遠く懐かしく    佐々木新

壇ノ浦落ちし平家か海市群れ    柴崎甲武信

望郷や雪解雫の音に佇ち      柴崎智子

早春やアクアラインにかすむ富士  関口高栄

 

◇第185回句会録(平成27年2月7日)主な作品

待つ春や鐘楼したの団子売り    安斎和子

秩父路やつらら連れねて星冴ゆる  大原和子

春の陽の奏でるちずむアンダンテ  岡部つねを

チューリップ姫と小人と抱きふ   勝浦敏幸

八方へ気づかふこころ花八つ手   小林幸二

カンバスの張りの強さの寒九かな  斉藤弘行

春陽の九十九谷を濃く淡く     佐々木新

紅梅や木地師も恋は村はずれ    柴崎甲武信

茅木の杜風ささやき吹き抜けり   柴崎富子

恵方巻きつひに関東席巻す     関口高栄

 

◇第184回句会録(平成27年1月10日)主な作品

六方の拍手昂ぶる初芝居      安斎和子

八海山望む湯宿に去年今年     大原絹子

初暦つるす昭和の釘錆びて     岡部つねを

人眠る黒き家並みや初日影     勝浦敏幸

蠟梅や秩父は神と仏の地      小林幸二

手つかずのおでんを前に別れけり  斉藤弘行

寒紅をきりりと点して子をなさず  佐々木新

ファックスで来る書初めの幼な文字 柴崎甲武信

初詣先ず遠富士へ会釈して     柴崎富子

霜の朝集団登校児等元気      関口高栄

のっそりと猫の行きけいr初鏡   森住霞人

◇第183回句会録(平成26年12月6日)主な作品

くさめして遂に解せず抽象画    安斎和子

五輪まで永らへむとて日記買ふ   大原絹子

あいまいな世に確かなる冬北斗   岡部つねを

オリオンや波ひたひたと舟縁に   勝浦敏幸

靴の底落葉踏めば落葉の詩     小林幸二

両方の手をあかしたる時雨傘    斉藤弘行

褞袍宿トンネルいくつ抜けて来し  佐々木新

年詰まる素手もて拭ふ棚の塵    柴崎甲武信

立冬や松つややかに皇居前     柴崎富子

大霜に手塩の野菜焦げにけり    関口高栄

残る陽が壁で遊んでゐる師走    森住霞人

◇第182回句会録(平成26年11月1日)主な作品

横須賀カレー木村屋のパン天高し  安斎和子

旭日の梢まぶすむ今朝の冬     大原絹子

天高し夫婦掛け合ふチンドン屋   岡部つねを

大杉の天辺かすめ青鷹       勝浦敏幸

犬と行くちょっとそこまで零余子道 小林幸二

一輌車駅に着くたび秋深む     斉藤弘行

小春日や富士まなかひのクラス会  佐々木新

活火山は地続き大根そっと引く   柴崎甲武信

村歌舞伎のぞく吟行暮早し     柴崎富子

熱燗にしみじみ思ふ来し方を    関口高栄

捥ぐ柿の幼なじみの顔に似て    森住霞人

◇第181回句会録(平成26年10月4日)主な作品

自販機の音の重たき秋時雨    安斎和子

亡き父の仕草を倣ひ松手入    大原絹子

地底より埼玉の秋蜂起せし    岡部つねを

コスモスや笑ひの尽きぬ女学生  勝浦敏幸

美しき手に美しき二胡の音風の盆 小林幸二

吊り橋に伸ぶる山影黄鶺鴒    佐々木新

蛇笏の山龍太の川や雁渡る    柴崎甲武信

晩鐘や知る人ぞ知る花野みち   柴崎富子

新鉄塔光る空には雁の棹     関口高栄

蔦の館の暗がりに聖母像     斉藤弘行

◇第180回句会録(平成26年8月2日)主な作品

永らえて故里ふたつ盆の月     安斎和子

改築の厨に匂ふ青簾        大原絹子

天道虫丘に登れば肩にをり     岡部つねを

遠花火母在りし日の声を聴く    勝浦敏幸

月見草最終バスの灯が滲む     小林幸二

稲妻や宴の後の夜のしじま     佐々木新

吊り尾根にひょっこり顔出す夕立雲 柴崎甲武信

頬杖に重さありけり夜の秋     柴崎富子

蔵町に土用うなぎや紺のれん    関口高栄

 

◇第179回句会録(平成26年7月5日)主な作品

冷酒や父の城跡床柱        安斎和子

桃色の薄紙に透けさくらんぼ    大原絹子

一卓は女子会なるやビアホール   岡部つねを

闇の目を凝らす黒猫信長忌     小林幸二

骨切りのリズムしゃしゃと祭鱧   佐々木新

湯上りに枇杷むく指の細きかな   関口高栄

蝉鳴けり頭上に敵機sりし日も   柴崎甲武信

山女跳び頂いどむ気配かな     柴崎富子

◇第178回句会録(平成26年6月14日)主な作品

青嵐気負ひて騒ぐ百の絵馬     安斎和子

花の苗すぐに貰われ梅雨晴れ間   大原絹子

剃り上げし青年僧や風薫る     岡部つねを

満タンの水鉄砲の頼もしき     勝浦敏幸

万太郎坂は雨坂額の花       小林幸二

アトリエの緑夜の窓を開きけり   斉藤弘行

独活のはな殉教の島明りゆく    佐々木新

白地着て逢ひしが事の始めかな   柴崎甲武信

隣席は旧知のごとし花火待つ    柴崎富子

大粒の青梅手捥ぎ笊こぼる     関口高栄

 

◇第177回句会録(平成26年5月3日)主な作品

薪詰めて焚かぬ夏炉や椅子二脚   安斎和子

片づけて暮らし小さく更衣     大原絹子

ブナの守る青池深き五月闇     岡部つねを

鷹も鳩も論客憲法記念の日     小林幸二

朝採りの山菜づくし余花の宿    佐々木新

南米のどこぞのみやげ藁帽子    柴崎甲武信

暖簾分くる風も立夏や城下町    柴崎富子

辛夷咲く農事暦をめくりけり    関口高栄

 

◇第176回句会録(平成26年4月5日)主な作品

墓誌銘に余白一行雁帰る     安斎和子

芽柳に想ふラインの渡し船    大原絹子

脳内に未開の地あり地虫出づ   岡部つねを

春嵐や嘘はとっくにばれてをり  勝浦敏幸

西行のいのち明りや花明り    小林幸二

春陰や画数多き文字探す     斉藤弘行

春の灯を点せば影の潤みけり   佐々木新

例ふれば絆の具象蝌蚪の紐    柴崎甲武信

源氏名の部屋のあれこれ花の宿  柴崎富子

足袋裏に筍探す朝かな      関口高栄

万愚節なべて明るき人の顔    森住霞人

◇第175回句会録(3月1日)主な作品

三月の色たしかむる万華鏡    安斎和子

それなりの家計安泰目刺焼く   大原絹子

雪解川日毎に音の拡ごれり    岡部つねを

春の蚊は宇宙の果てを飛ぶやうに 勝浦敏幸

雪を踏む釈迦入寂の日なりけり  小林幸二

春日傘オランダ坂にすれ違ふ   斉藤弘行

蓬の香いま明りゆく古墳群    佐々木新

分かち合ふ日差し白梅と紅梅と  柴崎甲武信

引鶴へ老い松背筋伸ばしけり   柴崎富子

羽二重の褥の如し雪の原     関口高栄

つくしんぼ探し当てたる杖の先  森住霞人

◇第174回句会録(平成26年2月1日)主な作品

立春の笛吹きケトル気負ひ立つ    安斎和子

蕗味噌へきらりと伸ばす若狭箸    大原絹子

上げ潮の春の匂ひや隅田川      岡部つねを

きふと縮みて俎の海鼠かな      勝浦敏幸

正月や駱駝に金と銀の鈴       小林幸二

父の日はバレンタインの日なりけり  佐々木新

鱈を干す浜に明治の油井跡      柴崎甲武信

立ち読みのファッション雑誌春隣   柴崎富子

時の鐘寒天ついて宙の果て      関口高栄

降る積もる雪が昭和に重なりて    森住霞人

◇第173回句会録(平成26年1月11日)主な作品 

柝の音に一瞬の寂初芝居       安斎和子

越の湯に泊まり馴染みし年酒かな   大原絹子

恵方道胸突き坂の先にあり      岡部つねを

両肩の力を抜けと福達磨       勝浦敏幸

湯上りの鏡のなかの雪女郎      小林幸二

着ぶくれの立ち読み許す古本屋    斉藤弘行

丸餅やしばらくぶりの妻の里     佐々木新

大根に裏の畑といふがあり      柴崎甲武信

初旅や声やさしき京言葉       柴崎富子

鈍色に時雨るる街や鉄の塔      関口高栄

◇第172回句会録(平成25年12月7日)主な作品

久闊や膳部忘れて炉辺ばなし      安斎和子

まろやかな千枚漬けや蕪掘る      大原絹子

木の葉降りやまず駅へと急ぐ癖     岡部つねを

切れ長の目元に黒子雪女郎       勝浦敏幸

スカラ座を出でて肩寄す初時雨     小林幸二

襖絵や次第に鷹の眼へ移る       斉藤弘行

銀に砂嘴を縁取る冬の月        佐々木新

時雨傘差しかけられぬ嵯峨野道     柴崎甲武信

割り箸の角の鋭し義士の日ぞ      柴崎富子

伊勢目指す鳥羽港しとど時雨かな    関口高栄

拭き終へし玻璃一枚の寒さかな     森住霞人

◇第171回句会録(平成25年11月2日)主な作品

鵙鳴くや若きがつくる流行語      安斎和子

新しき箸つややかに冬に入る      大原絹子

薄野や防人行きし道をゆく       岡部つねを

秋深し母似の人に席譲る        勝浦敏幸

天敵はわが身に潜み馬肥ゆる      小林幸二

画架立てる色なき風はうしろから    斉藤弘行

隅笹の縁取り白く冬に入る       佐々木新

分去れや朝は朝霧夜は夜霧       柴崎甲武信

秋の声聴く補聴器を入れ直し      柴崎富子

旧友の訪ねし今宵きのこ汁       関口高栄

秋風に先越されて渡る道        森住霞人

お遍路の掌に一酌の今年酒       横山正樹

◇第170回句会録(平成25年10月5日)主な作品

一膳の茶漬で昏れる秋時雨       安斎和子

秋場所や髷整はぬ勝力士        大原絹子

天高し大志いまだに胸に置き      岡部つねを

小鳥来る傘忘るるな忘るるな      勝浦敏幸

まん丸は仲秋の月孫の顔        栗原忠梨風

何時からの錆がこころに下り鮎     小林幸二

秋寒や足もからだの一部分       斉藤弘行

谺の空群れて翳なす秋茜        佐々木新

栗飯や屋号呼び交ふ宿場町       柴崎甲武信

去来忌や露の気配のことさらに     柴崎富子

さわさわと都会に秋を送る風      森住霞人

◇第169回句会録(平成25年8月3日)主な作品

新涼や八畳四つの元庄屋        安斎和子

盆狂言跳ねて銀ぶら楽しめり      大原絹子

場違いを承知の話水羊羹        岡部つねを

黒ビールルージュの唇に消えにけり   勝浦敏幸

ある筈の記憶探すや敬老日       小林幸二

富士山の見えるところに虫干しす    斉藤弘行

メロン切る富良野の夕日切るごとく   佐々木新

八月のひと恋ひ初めし宵なりけり    柴崎甲武信

水打つや里人今も垣結はず       柴崎富子

岩に浸む施餓鬼の読経岩殿山      関口高栄

背中にも照り返しある暑さかな     森住霞人

梶の葉や筆の運びのうひうひし     横山正樹

◇第168回句会録(平成25年7月6日)主な作品

母がりや肺の底まで青田嵐       安斎和子

昼目覚め真昼の音のみな遠く      大原絹子

著莪の雨いざ鎌倉へ馳せし径      岡部つねを

すててこや昭和の父の安息日      勝浦敏幸

黒髪を束ねて洗ふ硯かな        小林幸二

卯の花や洗濯ものは裏の川       斉藤弘行

万緑や長野電鉄うねうねと       佐々木新

皺くちゃなユーロ紙幣や巴里祭     柴崎甲武信

パラソルを夫に預けて旅のメモ     柴崎富子

鈴生りの小梅愛しや初漬けす      関口高栄

その先で切られし線路姫女苑      森住霞人

すててこや都ごころの夏館       横山正樹

◇第167回句会録(平成25年6月1日)主な作品

鈴の緒の手擦れや露の薬師堂      安斎和子

梅を干す小振りの笊に日を余し     大原絹子

乗り換への渋谷に惑ふ夕薄暑      岡部つねを

シャッターの開く音軽し夏の朝     勝浦敏幸

アマリリス赤い殺意がこっち向く    小林幸二

麦秋や線路どこかで曲がる筈      斉藤弘行

谿へゆく秘密の小径著莪の花      佐々木新

ゴッホの描く雲とし見上ぐ麦の秋    柴崎甲武信

五月富士自祝の背筋伸ばし立つ     柴崎富子

万緑の中に沈みて鯉住める       森住霞人

天空の子午線急ぐ夏の蝶        横山正樹

◇第166回句会録(平成25年5月4日)主な作品

夏炉焚く信濃の奥の万平館       安斎和子

草笛や竹馬の友のみな遥か       大原絹子

ふらここや富士一望の保育園      岡部つねを

囀と囀との間竹揺るる         勝浦敏幸

西行のこゑを探しに花行脚       小林幸二

蛇苺鎌倉街道崖続き          柴崎甲武信

もてなしの香を放ちけり山椒の芽    柴崎富子

蔵町の甍にび色桐の花         佐々木新

春風に押しまくらるる齢かな      森住霞人

白重生きて負ふもの多かりき      横山正樹

◇第165回句会録(平成25年4月6日)主な作品

飛花落花十指を開き眠る嬰       安斎和子

ちぎり絵の彩散らばして春炬燵     大原絹子

顔挙ぐば花の木多し七曲り       岡部つねを

緩急に合わせくるりと花筏       勝浦敏幸

春昼や鳩の鳴き出す時計店       小林幸二

つくしんぼポツリみつけし競技場    栗原忠梨風

あのときは恋人ではなし桜貝      斉藤弘行

リハビリの友多弁なり金鳳花      佐々木新

耳たぶに乗すれば歌ふ桜貝       柴崎甲武信

飛花落花力抜きたる古墳の背      柴崎富子

草餅の三時の茶漬け色の濃き      関口高栄

散り止まぬ桜を旅の衣とし       森住霞人

罅の入る三角定規大試験        横山正樹

◇第164回句会録(平成25年3月2日)主な作品

鷺降りて比企の春景改むる       安斎和子

赴任先決まりし吾子に梅ひらく     大原和子

鉄扉いま軋みて開きし大試験      岡部つねを

春風ややをら少女の踏むワルツ     勝浦敏幸

啓蟄や人の溢るる地下の駅       小林幸二

春雨に牧師を渡す小舟かな       斉藤弘行

薄氷割れてジグソーパズルめき     佐々木新

真砂女忌や安房より待たる花便     柴崎甲武信

手ぐせなる旧仮名遣ひ梅たより     柴崎富子

春湯浴み海の入日にのぼせをり     関口高栄

ことごとく海を向きたる水仙花     森住霞人

棟ボタンひとつ外して春を浴ぶ     横山正樹

◇第163回句会録(平成25年2月2日)主な作品

春光を蹴り上げて児の逆上がり     安斎和子

蠟梅に寄りし保育の乳母車       大原絹子

駐在の留守の机や福寿草        岡部つねを

耕人の動き静かに始まりぬ       勝浦敏幸

けふといふいのちを燃やす寒牡丹    小林幸二

凍瀧の音かくされてゐたりけり     斉藤弘行

刃物屋の鈍色沁むる余寒かな      佐々木新

濃く淡く薄氷光る棚田かな       柴崎甲武信

立春や先ずマニキュアの色変へて    柴崎富子

春ショール小江戸蔵町落語会      関口高栄

飛ぶ鳥の影を濃くして春障子      森住霞人

寒釣やどこか厳しき顔のぞく      横山正樹

◇第162回句会録(平成25年1月5日)主な作品

初口上八重子は久里子を妹と呼び    安斎和子

寝ね足りて心澄む日の冬桜       大原絹子

ひとつづつ擬宝珠撫でつつ初日かな   岡部つねを

みちのくの平らな闇に虎落笛      勝浦敏幸

母恋しふる里恋し手毬唄        小林幸二

腰掛のずれてはなしの終わりけり    斉藤弘行

輪飾りの曲がりをただし氏神へ     佐々木新

部屋毎の戸締りしかと寒に入る     柴崎甲武信

旅疲れ捨案山子と目の合ひてより    柴崎富子

宙抜けて真っ直ぐ吾に初日哉      関口高栄

壁と壁くっつきそうな冬日向      森住霞人

氏神へ徒歩小半時初参り        横山正樹

◇第161回句会録(平成24年12月1日)主な作品

雪しまき蝦夷漆黒の夜となれり     安斎和子

空の碧極めて銀杏黄葉降る       大原絹子

富士に雪ほどよきほどの山中湖     岡部つねを

山頂に立てば屹立冬の富士       勝浦敏幸

竹光でいざ出陣の菊武者は       小林幸二

囲炉裏火や鬼女のはなしはたけなはに  斉藤弘行

梟に急かされ点す湖の宿        佐々木新

山眠る鳥獣保護区の札立てて      柴崎甲武信

冬夕焼古地図の街を見せにけり     柴崎富子

初雪に逢ひに草津や湯気の宿      関口高栄

陽が匂ひ藁が匂ひて日向ぼこ      森住霞人

浮寝鳥漂ふあした愚に変る       横山正樹

◇第160回句会録(平成24年24年11月3日)主な作品

小春日の日がな撫でられおびんずる   安斎和子

しぐるる日家居楽しむ煮ころがし    大原絹子

乗り換への余るひととき鰯雲      岡部つねを

蒼天の隅々に柿熟るる         勝浦敏幸

鳩吹くやさらさらと落つ砂時計     小林幸二

新しき入歯きりりと冬に入る      佐々木新

大川の支流はいくつ波郷の忌      柴崎甲武信

誰彼の友の消息雁渡し         柴崎富子

破案山子かつぐ農夫や大夕焼      関口高栄

陽の匂ふ洗濯物を畳む秋        森住霞人

寺裏やこの一反は蝗の家        横山正樹

◇第159回句会録(平成24年10月6日)主な作品

白菊や一書に諭す修道女        安斎和子

居間のみに事みな足れり茶立虫     大原絹子

やはらかに風押し戻す芒かな      岡部つねを

夜光杯かざし月光そそぎけり      勝浦敏幸

世を憂ひ咲き遅るるや曼珠沙華     栗原忠梨風

鳩鳴くや掌中の砂こぼれゆく      小林幸二

骨董のつぼに影あり秋曇        斉藤弘行

行く秋や背丈のコントラバス抱く子   柴崎甲武信

通称遅刻坂てふ木の実降る       柴崎富子

山寺や壱阡拾五段目秋の風       関口高栄

巻き上げし簾傾き鰯雲         森住霞人

満潮や夜の河口のきりぎりす      横山正樹

 

◇第158回句会録(平成24年8月4日)主な作品

痩身の雀となりし残暑かな       安斎和子
パソコンで描くオーロラ夏見舞ひ    大原絹子

店先の古書やけてゐし「赤と黒」    岡部つねを

ごきぶりの道路横断成功す       勝浦敏幸

香水のひと吹き過去を消しさりぬ    小林幸二

攻め落とす気もなき議論扇子立て    斉藤弘行

夜這星古き館の夫婦杉         佐々木新

星屑の光とどくや蝉の穴        柴崎甲武信

旅浴衣今更に子の背丈かな       柴崎富子

馬子唄を歌ふおやぢの暑気払ひ     関口高栄

ゼロ戦を知らぬ若者雲の峰       森住霞人

スーパーに南瓜がひとつ閏年      横山正樹

 

◇第157回句会録(平成24年7月7日)主な作品

銀漢や生涯つけぬ耳飾り        安斎和子

果実酒のくれなゐ美しき夏料理     大原絹子

葉を替へて試してばかり草の笛     岡部つねを

南海の島を丸ごと大夕焼        勝浦敏幸

鷺草の空より戻る翼かな        小林幸二

朝凪や水脈長々と港より        斉藤弘行

蝦夷菊の白の純情利尻富士       佐々木新

朝焼や光を溜めし杜の湖        柴崎甲武信

芭蕉曾良ききし風音青田波       柴崎富子

初孫や二歳の両手さくらんぼ      関口高栄     

天道虫どこまで登る我を置き      森住霞人

生き恥を曝し嘘つく熱帯夜       横山正樹

 

◇第156回句会録(平成24年6月9日)主な作品

熟読の朝刊卯の花腐しかな       安齋和子

霧積へ別れゆく径夏帽子        大原絹子

日蝕は宙の鍵穴梅雨入前        岡部つねを

ごきぶりも人もしたたか逃亡す     勝浦敏幸

かじか笛ワインレッドの夜が更ける   小林幸二

柴又や白玉なんてしゃらくせ      斉藤弘行

裏木戸へ急ぐ青葉の下くぐる      佐々木新

麦秋や母校は八万曲輪址        柴崎甲武信

藤房やゆれてささやく風の私語     柴崎富子

鴉鳴く明け易の空引き裂いて      森住霞人

一壺酌みバイロンハイネと初夏の宵   横山正樹

 

◇「わたらせ吟行会」(平成24年5月14日~15日)於:国民宿舎かじか荘

参加者の主な作品

老鶯の声澄みわたり銅の山        勝浦敏幸

竜天に登りわたらせ淵蒼し        小林幸二

長き闇抜けて若葉の澤入駅        佐々木新

夏燕渓の一家を住みかとす        斉藤弘行

かたくりのうしろは風の吹き溜まり    柴崎甲武信

通洞坑のぞく地底の五月闇        柴崎富子

ジオラマの砕女の方に薄暑光       関口高栄

新緑や現世は足尾の水清き        宮崎敏明

 

◇第155回句会録(平成24年5月5日)主な作品

甘茶仏天上天下宥めをり         安齋和子

浅緑の天蚕ひとつ家苞に         大原絹子

両岸を引き寄せてをり鯉幟        岡部つねを

樫若葉眠りしままの宮参         勝浦敏幸

くす若葉克己の後に克己なし       小林幸二

蔵街に古き刃物屋軒菖蒲         佐々木新

烏麦倒し場外ホーウラン         柴崎甲武信

師を偲び文字摺草に寄りにけり      柴崎富子

桜鯛炊き込む湯気や障子越し       関口高栄

新緑の風引き連れ配達員         森住霞人

 

◇第154回句会録(平成24年4月7日)主な作品

人形の瞳の魔女めきし春の真夜      安齋和子

山茱萸の疎らに咲いて賑々し       大原絹子

青き踏む羅漢の里のわらべ唄       岡部つねを

昼飯をゆっくりと終へ花影へ       勝浦敏幸

逃水の中のふる里捨て切れず       小林幸二

花吹雪あびて列車は無人駅        佐々木新

季語集に句帖を重ね花筵         柴崎甲武信

初蝶に合ひし日付や旅便り        柴崎富子

新調の鍬をさばくや春の土        関口高栄

発車する無人の駅は華吹雪        森住霞人

城あとや常より遅れ花杏         横山正樹

 

◇第153回句会録(平成24年3月3日)主な作品

陽春や母校に建ちし聖裸像         安齋和子

鯛飯に紛れし小骨俊寛忌          大原絹子

春疾風韋駄天追ふや日本橋         岡部つねを

猪牙舟の後へ流るる春の雪         勝浦敏幸

亀鳴くや漢の本音聞き洩らす        小林幸二

春泥や府照り仲良く通れざる        斉藤弘行

地下鉄を出て啓蟄の風の街         佐々木新

古寺の杉戸絵を出で鶴帰る         柴崎甲武信

太梁のうすらほこりや涅槃西風       柴崎富子

囀が闇より朝を連れて来る         森住霞人

ウオッカの舌で炸けて余寒かな       横山正樹

 

◆第152回句会録(平成24年2月4日)主な作品

立春の根付けを龍に替へにけり        安斎和子

待ち針の色買ひ足せり針納め         大原絹子

立春や円空仏の目の細き           岡部つねを

船宿の二階座敷や春の雪           勝浦敏幸

家を出て帰るあてなし雪女郎         小林幸二

雨戸開く青に白白景色凍て          栗原忠梨風

山眠るうちに仕事は終わりけり        斉藤弘行

浅間山雲あしばやに二月尽          佐々木 新

戸袋に一禽の声春立てり           柴崎甲武信

立春の光まぶしき風見鶏           柴崎富子

たくあんを漬ける漢の目の強き        関口高栄

雀にも激しき恋あり花薺            森住霞人

鼻汁を漫ろに啜り寒まゐり           横山正樹

 

◆第151回句会録(平成24年1月7日)主な作品

ふくよかな八重子の所作や初芝居       安斎和子

小寒や一塊となる猿の群            大原絹子

初売りや深川なまり甲高く            岡部つねを

鴨の水脈空の青きを揺るがせり         勝浦敏幸

一行の詩あたためて年迎ふ           小林幸二

空っぽの車輌律儀枯野行く           斎籐弘行

祠一つ小さく残し冬田かな           佐々木新

日脚伸ぶ母校廊下の渡り廊下かな       柴崎甲武信

野面積石百態に寒夕焼             柴崎富子

柏手の響く熊野や年新た            関口高栄

寒暁や触感頼りに髭を剃る           森住霞人

ひとり寝や西高東低大寒波           横山正樹

◆第150回句会録(平成23年12月3日)主な作品

抑留五年炉話尽きぬ長寿眉      安斎和子

寂として奥社に残る冬紅葉      大原絹子

青年の歩幅大きく霜の朝       岡部つねを

紙漉を終へし雫の光かな       勝浦敏幸

ランナーの駆け抜く小江戸小春かな  栗原忠梨風

たましひの通るほそ道虎落笛     小林幸二

路地から路地へ室津千軒冬ぬくし   佐々木新

ナポレオン気取り冬帽横かぶり    柴崎甲武信

廃線の市電のレール片時雨      柴崎富子

風花の舞へる五色の沼に立つ     関口高栄

武蔵野の落暉が燃やす冬木立     森住霞人

垂れ籠めた冬の重さ厭ひけり     横山正樹

◆第149回句会録(平成23年11月5日)主な作品

爽やかや阿吽の意気の能鼓      安斎和子

待合室の片隅を占め毛糸編む     大原絹子

天の鷹元伊勢宮のかく深き       岡部つねを

初しぐれ麹の匂ふ蔵の街        勝浦敏幸

最果ての地の男郞花女郎花      小林幸二

冬蝶の土器の破片のごとく落ちて   齊藤弘行

産土の入り日あかあか神送り     佐々木新

包丁の使い手と見し煮大根      柴崎甲武信

母がりやきしむ立冬の蝶番       柴崎富子

旭日にはじけてざくろ笑ひけり     関口高栄

秋草にまみれて月の昇りたる     森住霞人

目さむれば裸電球息白し        横山正樹

「第二部」席題「神」「無」「月」折込で各一句・主な作品

有り無しの落穂を拾ふ媼かな     絹子

月代の無聊託つや冬ざるる      つねを

熊手から足もとに落つる月明かり   敏幸

新走り神様より先に飲む        弘行

神杉のひときわ高し里神楽       新

まぐわひは古事に習ひぬ里神楽   甲武信

一句得んや無心に秋の月に佇つ   富子

田の神が山へ帰るや十日夜      高栄

◆第148回句会録(平成23年10月1日)主な作品

鏘鏘と黒人霊歌秋深し           安斎和子

遅れ着く句会しずかな台風裡       大原絹子

対立といふ談合捨団扇           岡部つねを

人生も宇宙も広し柘榴裂く         勝浦敏幸

秋渇き空の弁当が鳴る           小林幸二

裏店に内緒は無用秋刀魚焼け      佐々木新

ここは信濃はつはつ辛夷黄葉づれる   柴崎甲武信

木馬はづむや露こぼし灯こぼし      柴崎富子

一束編み櫓田踏んで藁しまふ       関口高栄

玉入れの空の高きよ園児の手      森住霞人

牛蒡洗ってジンジンと指の先       横山正樹

◆第147回句会録(平成23年8月6日)主な作品

心底の解らず仕舞氷菓溶く         安斎和子

候文のかなうつくしき生身魂        大原絹子

熱帯魚恋の遍歴そぶりなし         岡部つねを

夜の秋蛇口の水飲みにけり         勝浦敏幸

螢火やそこだけ闇の濡れてをり       小林幸二

誰かれの声の聞こえて昼目覚め      佐々木 新

行き摺りのひとにまた逢ふ夜店かな    柴崎甲武信

繭倉のすみそこここにちろろ鳴く      柴崎富子

をみなへし揺れる心のままに揺れ     森住霞人

星月夜等閑戸言と聞き流し         横山正樹

◆第146回句会録(平成23年7月2日)主な作品

シルエットみな美しき青簾          安斎和子

推敲の夜半父の日の百合匂ふ       大原絹子

夏至の日に北回帰線跨ぎ飛ぶ       岡部つねを

雨音にかくれしまふ遠蛙           勝浦敏幸

蝸牛歩み眺むる無聊かな          栗原忠梨風

その中は般若心経落し文          小林幸二

夏霧や一期一会の避難小屋        佐々木新

あんみつや無駄なはなしを無駄にせず   齊藤弘行

街角にはみだすカフエや巴里祭       柴崎甲武信

虫干しや戦火に焦げし花瓶敷        柴崎富子

草を抜く度に思ひ出近くして         森住霞人

夏痩やおでこ拭って茶漬飯         横山正樹

◆第145回句会録(平成23年6月4日)主な作品

仕切り戸の渋る卯の花腐しかな    安斉和子

梅雨寒や時差九時間のメール打つ  大原絹子

空豆のぽんと飛び出し青畳       岡部つねを

ふぞろいの二列縦隊葱坊主       勝浦敏幸

野仏の掌にひろわれし雨蛙       桑田忠夫

千枚の植田へ千の風の声       小林幸二

峡谷の切り取る空や岩燕        佐々木 新

風薫る隅田の流れ江戸切子      斉藤弘行

山小屋の黒板大書く「今日梅雨入り」 柴崎甲武信

葭簀ごし子のいさかいを默過せる   柴崎富子

行く雲を映す代田や棚田毎       関口高栄

夏立ちて白さ眩しき看護服       森住霞人

蜘蛛の囲の顔にかかりてかくれ里   横山正樹

◆第144回句会録(平成23年5月7日)主な作品

五月来る非常袋の水替へて       安斎和子

筍飯の夕餉二世帯つながりて      大原絹子

夏立つや花鉢増えし佃島        岡部つねを

夏立つやレンブラントの闇生まる     勝浦敏幸

唐國の人々去りて黄砂来る       栗原忠梨風

ごがつになったらそとであそぼうねぢいぢ 栗原栞奈(6歳)

父と娘のバージンロード芝桜       小林幸二

節電の談義あれこれ更衣        佐々木 新

卯の花の香を込めスケッチブック閉づ  柴崎甲武信

依存する気もなき薬買うて梅雨     柴崎富子

雲雀鳴く塩谷岬や波白し         関口高榮

言葉より重き沈黙啄木忌         森住霞人

七歳のときと同じ粽解く          横山正樹

◆第143回句会録(平成23年4月2日)主な作品

胸中に戦中戦後地震の春         安斎和子

連翹の座敷に下す文机           大原絹子

春月や停電の夜のやさしかり      岡部つねを

朧夜の茶渋の底にありにけり      勝浦敏幸

父子して名残の霜の見廻りに      桑田忠夫

幼子に手引かれ歩く春日和      栗原忠梨風

見えそうで見えぬ本音やさくら餅    小林幸二

春驟雨十三重の桧皮葺         佐々木 新

あんぱんをほのぼのと喰ふ花の山   斎籐弘行

天と地をまるごと映ししゃぼん玉    柴崎甲武信

夕映や初花の明日うたがわず       柴崎富子

買い占めの列の殿冴え返る        森住霞人

月おぼろ座敷童も男めき          横山正樹

◆第142回句会録(平成23年3月12日)主な作品

前山が背山を起こす春一番        安斎和子

自転車で届く赤飯涅槃西風        大原絹子

モナリザに微笑み返す古雛       岡部つねを

枝ぶりに白馬の意地見せてをり      勝浦敏幸

手びさしの筑波二田嶺や春霞       桑田忠夫

南より絵手紙届く四温かな         小林幸二

流氷の起伏夕日を捉へけり        佐々木 新

大泊小泊雁の返りけり           柴崎甲武信

吟行の出句の刻や夕雲雀          柴崎富子

朝膳の箸に絡める春便り           森住霞人

春の炉やちょびりちょびりと昼の酒      横山正樹

◆第141回句会録(平成23年2月5日)主な作品

暗算で売る雛あられ小江戸小路      安斉和子

オレゴンへ吾子を見送る寒の明け     大原絹子

豆撒きやB型人間鬼の役         岡部つねを

口あけて梅の香りを吸ひにけり       勝浦敏幸

凍解けや入間川面を鳥覆ひ       栗原忠梨風

囁きの水音やまずよ猫柳          桑田忠夫

鷽替へて我が身の錆を打ち払ふ     小林幸二

朝礼を吹き散らしけり春一番        佐々木新

絵踏女の小股の切れを隠しきる     柴崎甲武信

かい間見し夫の童心鳥雲に         柴崎富子

うとうとと野良の日溜まり春兆す       関口高栄

寒に入る薬缶に滾る音のして         森住霞人

賑はひは宵の口まで一の午         横山正樹

◆第140回句会録(平成23年1月8日)主な作品

ひとかどの酒席となりぬ女正月       安斉和子

割烹の急階段や初句会           大原絹子

秩父嶺に紐先飛ばし喧嘩独楽      岡部つねを

福達磨我慢ここまで八起かな        勝浦敏幸

ゆるゆると団欒の良し三が日       栗原忠梨風

初夢のメモ書き忘る迂闊かな        小林幸二

寄り添いてコートの厚さ重さかな      斉藤弘行

雌阿寒岳の湖を鏡の初化粧       佐々木 新

寒梅の万朶に隠れ道行す        柴崎甲武信

寒茜黒富士型を正しけり          柴崎富子

根深堀洗い場白く輝やけり         関口高栄

振り向けば我が影法師冬木立       森住霞人

寝返れば骨の音さへ御慶かな       横山正樹

◆第139回句会録(平成22年12月4日)主な作品

津軽寒し太郎遺作の河童像         安斉和子

ちんどんやの郷愁に就くく街師走      大原絹子

山茶花や九十九曲がりの歌垣路     岡部つねを

酒四合袋小路の時雨けり           勝浦敏幸

枯葉落つ音の轟く散策路          栗原忠梨風

ページ繰る電子書籍や初しぐれ       小林幸二

黒鍵を押してなじます冬曇          斉藤弘行

浮寝鳥ほのぼの明けの湖の色      佐々木 新

雪女は真砂女銀座に降り積めば     柴崎甲武信

山眠る関越トンネルふところに        柴崎富子

蒲焼や小江戸老舗も薪をたく         関口高栄

北吹くや髪の先まで尖らせて         森住霞人

キャラメルの甘さ懐かし冬籠り         横山正樹

◆弟138回句会録(平成22年11月6日)主な作品

とんぼうや龍太庵の竹箒            安斉和子

履き替へしタイヤ転ばす暮の秋        大原絹子

小春日や一葉の井戸汲みてみる     岡部つねを

細胞と思ふしかない石榴食ふ        勝浦敏幸

ロボットが人に恋する文化の日       小林幸二

ヴェテルのやうに悩まず生身魂       斉藤弘行

間欠泉噴いて小春の日を隠す       佐々木 新

冬めくや片減りぐせの靴の底        柴崎甲武信

風鎮の陶の重さや十二月           柴崎富子

天空の底まで見せて秋澄めり        森住霞人

鼻うたで簾大根ほどきけり          横山正樹

 

◆第137回句会録(平成22年10月2日)主な作品

みちのくの秋天といふ広さかな         安斎和子

雁や餓鬼大将の在りし頃            大原絹子

さぼり癖見透かされてゐて良夜かな    岡部つねを

それぞれのクレーンごとの赤とんぼ      勝浦敏幸

牛頭天皇の婆娑羅眷属曼珠沙華       桑田忠夫

筆塚やこころ自在に萩の風           小林幸二

経文を唱へて萩の声となる           斉藤弘行

稲の香の溢るる門田茅の屋根        佐々木 新

日に三度来るバス停や大花野        柴崎甲武信

立ち読みや夕風に秋たしかみる        柴崎富子

たどり着く香りの先の金木犀          森住霞人

日和下駄小気味良き音秋惜しむ        横山正樹